我孫子の住宅Kokage

講師の中川さんに調整していただき、我孫子の住宅Kokage(設計:末光弘和+末光陽子 一級建築士事務所 SUEP.)の見学に行ってきました。
http://www.suep.jp/




左が設計者の末光さん。真ん中がお施主さんです。




1階はフレキシブルな空間です。南側の勝手口を開け放てるように設計してあり、そこから北側に風が抜けていました(勝手口を風の取り入れ口にするというのは、現場で風がずっと吹いてくるのが気になって決めたそうです)。






ユニット内部には、床暖房用のパネルが埋め込まれており、井戸水を循環させているとのことで、壁面の温度が下がっている様子がわかります。ヒートポンプなどで多くの電気エネルギーを使用して冷やすような機構ではなく井戸水を汲み上げるポンプ動力しかかからないので、中間期には比較的良いシステムなのかなと思いました。





屋外にもユニットが飛び出してきています。




トップライトは夏にはかなり日射が入ってくるのではないかと思いましたが・・・

屋根にあがって、すだれをトップライトにかけることで調整できるとのことでした。お施主さんによると、これをやらないと夏はツライとのこと。生活の中でうまくこういった行為ができるように設計してあげることも大事なのかと思います。





2階はプライベートなスペースとして設計してあり、1階とは違った雰囲気でした。


個人で住まわれている住宅を見学する機会は、普段なかなかないので、とても勉強になりました。


見学会を組んでくださった中川さん、案内していただいた末光さん、見学させていただいたお施主さんには大変お世話になりました。


ありがとうございました!

受講生設計方針

芹川真緒
グラデーション(温度ムラ)の家
寒さ、雪を活かす
林業や燃料(地域性)と家の関係
床天井高さ操作
周囲との関係
豊かになった生活の具体化(絵・模型で表現)

黒川一生
過疎化の進む北海道の農村都市。完全に自動車に依存する現在の都市構造では美幌町は「持続不可能」であると考える。今回提案する住宅は空洞化する市街地の中心で道路を敷地とする。将来的に住宅と道路の関係は反転し、つながりを持つ住宅とそこに囲まれた農地が生まれる。

茅野淳
地下の空間を作り、屋根面を操作するとそこに面白い空間が生まれ、
その下に住む人のとらえ方によって独自のプランやライフスタイルが生まれる。

小林栄範
いいたて林の住宅付き温室を提案します。
納屋を温室に転用するにあたり、新たに屋根をかけ直し日照を考えた農業に従事する人のための住宅を設計します。気候+環境によりそうように移ろう住宅を考えたい。

中島弘貴
観光資源に依存する町での住宅の目線から見た都市の在り方。
観光客を利用した縮小する地方都市でのコミュティの形成の補助、促進
空家になったまちやというストックの転用。

古市渉平
外部環境をデザインする。
ヒートアイランド化を緩和改善するような仕組みを複数作り、
またそれが社会に広まっていくシステムを考案する。
設計対象:駐車場、既存住宅
手法:緑化、通風、遮光

堀越和宜
裏界線という幅2mの現在使われていない裏通りを整備し、そこに開いた住宅の建て替えの提案。暗く細いとおl理に環境装置を設置し、風、光をコントロールする。裏界線側を住宅がセットバックすることで、住宅に光、風を呼びこみ、サンルーム等で安定した温熱環境をもたらし、生活が裏通りに開いていく。

野村圭吾
日本一の森林率を誇る高山市で大量に野山に放置されている間伐材(のみ)を用いて、環境的問題点の多い町屋のリノベーションを行う。
家全体を一室空間とし、夏は風をよく通し冷房入らず、冬はペレットストーブ1台で家全体が温まるようにする。暗いミセニカイに光を取り入れる。

浦西幸子
佐鳴湖の浄化に対する建築からのアプローチを考えます。
具体的には雨水を徹底的に利用することで、温熱環境や水の浄化を行い、最終的にさまざまなファクターが立体的にからみ合う建築形態を目指します。

山拓
離島での自給自足生活を可能とするための、建築システムの提案。都市生活のようにものや情報に満たされた幸せではなく自分に必要なモノは自分で作り出されていく喜びをおくることができる生活スタイルを提案する。

中川あや
安定した気候でも丁寧に読み解き、機能ごとにボリュームを細分化して考えることで、
気候、場所、住まい手によって多様性を持つムラのある住宅空間ができる。
そしてこの方法論ではほかの?地域の穏やかな場所で形を変えて成り立つ。

吉田雅史
自然も人も豊かな高知県
そこで暮らしていくためには、絶対的に仕事が不足しています。
今回の提案は郊外住宅街に仕事と居場所を作る
アーキテクチュアル・マイクロ・ファイナンスというものです。
建物のオーナーと住民グループに資金と建築のアドバイスを融資します。
事業を自立させながら資金を返済する仕組みです。
これにより地域住民の視点から地域の問題・魅力をビジネスとしてとらえ、そのための空間をちりばめられていくと考えています。

野口真治
「傾斜面+少子高齢化」という北九州が抱えている問題に対して、斜面地の住戸密度を下げ、緑を増やし、道路を拡幅し、良好な居住環境から低家賃の市営住宅を計画することで若い世代を流入させ、高齢化を緩和するとともに産業・コミュニティの存続を図る。

船橋信吾
環境建築一般に使える構造の構築がCONCEPTである。テンセグリティによる膜構造は工期が短い上大規模建築にも適用できる。この構造の圧縮材を蓄熱パネルとし、日射量をコントロールし、環境と構造の融合を目指す。

草川研二
最低限の建築的操作により、温熱環境がガラッと変わる住宅。その際、家具スケールのものを操作しつつ、水の(カーテン状)集住を計画する。

辻野満
宮古島という、現在サトウキビを売ってRCを買うという構図をもつ弱い島で寿司でも自給樹立をあげるために木造の建築を考えています。
風を通し、風から守る、ということをメインテーマに形から風を操れるようなものです。
環境、構造的に、ひだの様なプランから考察しています。

パネル発表










井口さん:
今日はだいぶ面白かった。最終提出にあたっては、もっと模型やパネルで最後に見せる形というか、建築的な表現をしてもらいたい。表現については色々と講師の先生方に聞いたらよいが、最後に自分がやりたかったことが見えるようなプレゼンテーションを心がけて欲しい。


平賀さん:
悩まずに堂々とやってほしい。先生のために設計をやっているわけではなくて、自分が信じることをやって欲しいし、言っていることがブレないほうがいい。前段に「僕はこう考えたんだ」という説明をする人が多かったが、それよりも


坂本先生:
環境のことをもう少し考えて、精度を上げて欲しい。がんばってください。


羽鳥さん:
プレゼンテーションにあたっては、評価者をイチコロできる何かが必要。そういうものがなければ、どんなに正しいことを言っても見てもらえない。パースでも断面図でも何でもいいので、そういうのをひとつは持っていて欲しい。


川島さん:
あと2週間あれば、コンペだったらいろいろできるのでがんばってやって欲しい。せっかくだから、環境系のスタジオであることを活かしてもらいたい。ちょっと苦しくなっていつもの課題だったり意匠系の人がやっているような手法を使っているが、あと2週間あるので新しいことにチャレンジしてもらいたい。そうすることが将来に繋がると思う。


中川さん:
一番最後のグループしか見れていないが、一撃できるキャッチーな言葉がないのが残念。プレゼンテーションはきれいに並べるだけではダメ。みんな色々と調べてきた経緯もあるし悩みながら右往左往していたので全部載せたい気持ちは分かるけど、こういう一発勝負の場ではわかりやすいものが勝つ。「キャッチーな言葉」「きれいなプレゼン」「コンセプトを伝えるわかりやすい絵」の3点を心がけるように。


早野さん:
他のスタジオでできなくて、このスタジオでできることがもっと積極的に出てきてもいいと思う。何か自分が立てた仮定を証明するためにCFDがあったりする。プランニングの過程でCFDをかけて、またさらにプランニングに反映させるといったプロセスが反映されるといいし、そこが見えると他のスタジオと比較しても面白いと思う。


前先生:
ここで何をやるかが見つかっていれば、あとは手を動かすだけ。忘れないようにしてがんばって欲しい。今日紙にテーマを書いてもらったのは、自分の言いたいことがコンパクトにまとまっているかを見つめなおすことでもある。みんなであとで振り返って欲しい。

羽鳥さんからのコメント

中川あやさんのエスキス後思ったことがあるので書き込みます。
問題解決型か問題発見、提起型か。
すべての提案はこの両側面を多少なりとも持っていますが
前スタ初年度の覇者である寺沢さんの案は大筋では問題解決型提案です。ヒートアイランド問題というすでに意識されている問題に対してその解決方法を提案していく形式です。
その方法にある程度のリアリティがあり、シミュレーションによって確かさを証明でき、それに上手なドローイングあってこれが勝利の決め手でしたが、この形式が有利な点は問題を解く意義を説明する手間が省けるのと、マイナスからの出発なのでなにかアクションを提案した場合悪くなることがない。
ただし、今回の住宅提案の場合この問題解決型でいくと、本質的ではあるけれども非常に地味な提案になります。ここで革新的な提案がでることが理想ですが、これはプロでも見つけられていない。なので、前例主義的現実型提案となると、断熱、蓄熱、通風、ソーラーパネルエネファームなどと同じような提案になる。もっともここでもコアな部分で面白いことはあります。エンジニア萌えという状態にはなりますが、それをスタジオ課題という言わば社会の縮図状態(すこしちがいますが)の評価の土俵でやるにはどうかと。
これでいくと壁の断熱、ガラスの複層化のように次世代省エネ基準にするとか、ソーラーパネルをつけるなど既往の提案の組み合わせを考えることになる。それ以上のことをするとなると、途端にリアリティがなくなるという、プロでもいわゆる“建築的な提案”というものになりにくい。ヴィジュアルになりにくい話になります。
では問題発見、提起型の場合はどうかというと、問題に取り組む意義を認識し、テーマ化し、その問題の解決や提案の実現により、建築やひいては社会がどうよくなるのかを訴える必要があります。さらに評価を得ようとすれば、それが建築的に魅力的なものとして認識される必要がある。この建築的に魅力的というのは結局のところ見た目です。
これまでのメディアに載るような作家の作品というのは多くはこの部類に入ります。メディアに効果的なのはヴィジュアルなので、視覚的に良いものが良いとされてきました。
ル・コルビュジエのサボア邸が名作となったのは、当時視覚的に今までにないものであったのは間違いないですが、自動車がパーソナルなものになってきた時代であること、鉄筋コンクリートによる構法の革新とそれがもたらす、屋上庭園、自由な平面、自由なファサードなどありますが、それが明るく、快適な住環境を作り出し、パリなどにある邸宅にはない新時代のライフスタイルをもたらすであろうことを容易にイメージさせるヴィジュアルがあったからです。まあ細かく言えば他にもいろいろありますが。そして、深く読み取ると、その現代的な空間を社会に広めることが、身体にとっても科学的(当時の)に正しい、都市に緑地が増える。構造的にも強く、都市にフリースペースをもたらす。因習にとらわれた中世の建築に住むことがいかに問題なのかが見えてくる。という順序でしょう。
逆の順序で認識される場合はほとんどないのが現実です。
最近の物で言えば、妹島さんの梅林の家などは鉄板構造による住宅空間の視覚的変化、境界がないという単純なものではなく、境界はあるけれども鉄板よるこれまでの1/10くらいの薄さの境界が隣室や外部をより近くに感じさせ、人間関係や自然との関係をより親密にするというストーリーが今日的距離感を見事に表現している。この住宅をみることによって普段問題とも思わないことに気づくということが名作とされるところでしょう、温熱環境的には最悪でしょうけど、それでもそこに住む人が大切にそこに棲んでいるのは温熱環境のプライオリティが実は人間にとっては低いことを表しているのかも知れません。上記の空間的な提案があってなおかつ温熱環境が最適であれば言う事なしなのは明らかですが。
単純な研究ではなくスタジオ課題だとすると、こちらの提案方法がベターだと考えます。
まず、空間的に、ヴィジュアル的になにかを感じさせるものがあって、それが環境的に考えられているという順序です。ぱっと見て面白そうだと感じさせられなければ評価を得ることは出来ません。この課題に限らず、卒計もそうだし社会に出てからもそうです。魅力を感じさせられないものは仕分けられてしまうのです。クライアントに蓮舫的な方がいたらなおさらですww。また環境的にと言ったときに、人は周辺環境を視覚によって約8割を判断していると言われています。温熱感、気流感は残りの2割のうちに含まれるので、そういう意味でも妥当なのかもしれません。視覚が遮断される寝室、浴室などは温熱感、触覚優位といった変化はあるかもしれませんが、日本なんて気候的には世界的に見たら穏やかなのでとくにそうでしょう。構造的にはつらいですが。
では温熱環境、ひいては消費エネルギーという見えないものが問題化している現代において、古典的な建築家的提案で良いのか。というのが前スタ的提案、問題意識の置き所でしょう。ただし、フォトジェニックな空間以外のものは構造のFEM解析を視覚化した赤や緑のコンタ図や、温度や風を視覚化したサーモグラフィや気流解析による矢印などですが、これも結局は視覚化しないと人に伝えられない。早野さんが快適さを伝える(直接的な)メディアがないとおっしゃっていましたがまさにその通りで、結局のところいまはヴィジュアル化して伝えるしかない。それらのどれかでまずは面白いと思わせる図を一つだけでも良いのでつくる必要があります。
 月曜日に中川さんのエスキスをした際には、問題解決型提案とする場合の思考方法でエスキスしてしまったのですが、提起型の提案とすれば、特殊解として突き詰める方法もあります。ただしその場合は、風や温度差のことを考えて、住宅を変化させたとすると、それだけのためそんな操作をするというのに価値を見出せるかというと、それは論破しにくい。(日本のある範囲の地域は)穏やかだからこそ、積極的に外部を住宅化しようとか、そもそもの住宅よりもボリュームが少なくて済む。実際にコクヨの本社ではエコロジカルに働くために、気候がいい時期には屋外で仕事をし、照明電力削減やクリエイティビティの向上につなげていたりします。そしてそのための配置を“評価軸を仮定した上で”検証しよう。高低差を住宅に与えて、微妙な温度差を利用しきるとか、別荘に行った様な気になるとか。効果、意義を最大限考えつくす必要があります。
新しい住宅を提案する。→沢山の効果がある。さらに今日的であるなど社会性がある。→温熱環境、気流も検証されている。という順序のほうが客観的に受け取りやすいのではないかと思います。で、その検証の確かさを相対的に示せるように、気流、温度差を通常住宅や、フラットバージョン、高低差ありバージョンで検証するとすれば分かりやすいかと。
さらに、この気流の乏しい地域でも出来るので、多くの地域で採用できる形式であるという大きな話に結び付けられたら良いのではないでしょうか。
などと思いました。気づいたことがあったらブログに書き込むといっていたので。では今夜。

6/10(Thu)高瀬へのメールより

レクチャーとエスキス


講師の中川さんにレクチャーをしていただきました。

卒業設計・実作を通して中川さんがどのような考え・仮説を持って設計をされているかが垣間見えた気がします。
今考えていることが必ず何かの役に立つときがくるので、学生のときに考えていたことを忘れないようにして欲しいとのことです。


中川さんのお話を受けて、前先生からのコメントで、
スティーブ・ジョブズスタンフォード大学の講演での、「Stay Hungry,Stay Foolish.」という言葉を引用に出していました。

以下はスチュアート・ブランドの「Whole Earth Catalog」に影響を受けたジョブズのスピーチです。
http://sago.livedoor.biz/archives/50251034.html
http://www.wholeearth.com/index.php
http://greenz.jp/2009/03/16/wholeearthcatalogue/


今回のスタジオ課題でも、ちっちゃくまとまるより、あとで悩み続けて後悔してしまうような提案をしてしまったとしても、それはそれで後々に意味があるかもしれないとのことでした(笑)
とにかく自分のコンセプトを持つことが大事です。






レクチャーの前後でエスキスの様子です。ちょっと進行具合に差が出始めてきましたが、なんとかみんな頑張ってください!

中川さん:
今、前先生も言っていましたが、この一週間が勝負です。がんばりましょう。

井口さん:
中川さんのレクチャーで温度むらの話が出たが、いま均一な温度環境が求められている中で、
みんなの設計に「時間」の要素が入ってきているのが、面白い。時間帯ごと、季節ごとにどこがどのように使われるかなど、少しずつ考えてくれるようになってそういったことがそれぞれの設計を面白くしているように思う。

寺尾さん:
ライフスタイルの要素が出てきはじめていて、うれしく思う。実際には設計者の意図と、住まい手の使い方が違うことが往々にしてある。住まい手の使い方・動き方といったライフスタイルまで予想して設計できるようになると面白くなるだろう。

川島さん:
中川さんの話を聴いたり、普段現場で1000人くらいが仕事している場面を見て思うのだけれども、建築の作られ方を考えるときに、学生のときに考えていたパラメータがいかに少ないかということに気づく。どれだけ新しいことを考えようとしても、すごく色々な与条件で狭められていく中で新しいものを作らなければならない。実社会に出ると、いま考えていることと違った悩みがでてくると思うが、今の段階では、実社会での細かいことを除いた視点で「こういう視点があったのか!」というのを出せない限りは、課題をやっても意味がない。提案する建築が「環境建築」と言われてしまったら負けだろう。ただ、環境的に良しとされてきた建築をしっかりと分析して、今回は住宅スケールで全部自分で把握できるスケールなので、どこを突いたら新しいと思えるかを探して欲しい。中川さんはどこを突いたら建築が新しくなりうるかといった目の付け所がすごい面白い。みんなも学生ならではの新しさを見つけてもらいたい。

坂本先生:
みなさんには、空気・熱・設備などの私が持っている知識などを少しでも利用して欲しい。

寺尾さんによるエコハウスの詳細紹介

寺尾さんにエコハウスの断面詳細図について解説していただきました。
断面詳細図は、使う素材の物性値や性能が厚さや構成になって表現されてくるので実は大変面白いものです。

受講生のみなさんは、ここまで考えることは難しいかもしれませんが、参考にしてみてください。

後半は、海外の事例やご自身で設計された物件を紹介していただきました。