講師の方々のコメント

井口さん:
みんなの自己評価は低いけれども私は低いとは思っていない。まあ発表した本人が一番厳しく評価しているだろうけど。他のスタジオも聞いたが、ここは情報が多い。整理するのが上手くいかず一分では伝わり切らなかっただけ。設計は集めてきた情報を全部使って設計するのではない。情報を吸収し、整理し、コンセプトを打ち出していく。そのときに整理したものの中で何を切り捨てていって何に対して設計に進んでいくのか。今回は設計の話をして指摘を受けた人はいなかったが、設計に必要な考え方を指摘してもらえたからこれからうまく絞り込んでいって設計に結び付けて欲しい。
中川さん:
全体的に何を言いたいのかわからなかった。せっかく北から順に説明したのに、敷地調査、エコハウスの調査、設計提案、この3つのプレゼンの時間配分がバラバラだった。聞くほうも混乱してしまった。この課題は日本の北から南を調査することで世界のほとんどの部分をカバーできていることに意義がある。それを意識できているのは、辻野君の「25億人に適用できる」という発言だけだった。東大生の役割は日本のルールをつくることであることを少しだけ意識して欲しい。それが裏で問われている。その意味で調査が少し足りなかった気がする。結局、ある地域で一つのものを作るんだけど、それは試行実験であって、それをどれだけ他の地域に活かすことができるか。そういうルールやモデルをつくるのがこの課題の最大の目的。最終的な6月の後半の提出までにそういうとこまで話を持っていけたらいい。
しかし、去年、一昨年よりもペースが遅いのが気になる。(前先生:確かに建築にはなってないですね。)なので、今夜何をするかが重要。そこで差が出る。(これはお尻を叩いているんけど(笑))調査が足りないと思ったら今夜調べる。形ができていないなら今夜2案つくる。朝までに3案つくる。設計というのは落ちてくる未来をつかみ取ろうという気持ちでやっていくもの。今日終わったからほっとするのではなく、今夜から明日にかけて進めて欲しい。残念ながら先週から進んでいる人が余りいない。明日までに何をするか意識して欲しい。
早野さん:
全体としてこのスタジオは圧倒的にレベルが高い。このスタジオ経験して、この時間を共有していることは自分の設計に役立つことを意識して欲しい。自分のやっていることだけではなく常に人が何をやっているか目を配っていた方がよい。
自分が解決しようとしている問題の策は、他のところのみんなの作品の中にあるかもしれない。自分がやっているのは大きなケーススタディーの一部分だという意識でやった方がいいのではないか。それと、環境というパラメーターを人に伝えるメディアがまだ世の中にないという弱みが今日出た。そのときにデータであったり日照であったりの話をしていたが、でもそれは評価する人にとってはどうでもいいことであって、それはきみたちの中に置いておくことで、それをあの場で言うことってひょっとして全く必要ないことかもしれない。ただエコハウスの環境に頼ることによってそれを出してしまった。つまり、それを自分の設計に落としこめていない。設計の手法としてなっていない。それを自分のなかでメディアを作らない。前先生の言われるゲーム理論、フーディニの話のように(補足:アメリカの奇術家で、奇術にエンターテイメント性を加えた人物。去年のスタジオで前先生が新しい見せ方を開発するべきだという説明のときに引用した話)、自分のフィールドを作って設計者の人にあの問題はああで、あれをああすることでよくなった、だからよくなったというような評価基準を与えてあげるぐらいのスタンスでいかないと伝わりづらい。そのために通風といえば何が一番伝わるかというと、建築の空間のパースをちゃんと描いてあげて、その中で風が流れて。風をどうやって可視化できるか。風が揺らいでいるような絵を描いてそこに人を描いてその空間のよさを伝える。場面として与えてあげること。その裏にはこのデータがあってそれが設計に落とされていることがちゃんとあって、最終的には空間としてちゃんと出さないといけない。そこがこのスタジオの大きな課題だと思う。これから同年代の建築に向かっていかない課題でもある。そのために今回このテーマをやった。報告(レポート)としては圧倒的。では、今度はこれを一切出さない。その次の方法として何を出していくのか。リサーチと設計をどんどんフィードバックさせながらやっていかないといけない。でもすごくよかった。お疲れ様です。

寺尾さん:
お疲れ様でした。皆さんの自己評価は低いですが私はそうは思ってなくて、楽しませてもらった。最後の発表時にTAの人を中心にチームとしての発表ができればもっとわっと浮き出てくると思った。例えば、伝統建築の持っている地域気候風土のポテンシャル、そこのライフスタイルから学んでいること。それからエコハウス、設計者がそれを掴んで提案したもの。それから皆さんが提案したもの。その三つが連鎖しているということを、一つのプレゼンの中で17人共通の順序で出てくると聞いている方も分かりやすいなと思った。表現を同じにするというのは変だと思うんだけど流れているものを、きちっと把握して浮き出してくる方が聞く側は分かりやすい。その辺をTAが中心となってやればよりよくなる。それから大野先生は環境オタクなんです。(笑)3年位前に『2050年から環境を考える』という本を編集した時にトップバッターで書いてもらった。人口減少の話や首都高速を全部緑化するという大胆な発想をされているんですが、バックキャスティングといって2050年を主軸において今」私たちが何をするべきかという、後ろから考えていくバックキャスティングをテーマにした本なのです。中村勉さんと大野さんは1年違いで槙事務所でずっと一緒に仕事をしていて先輩である中村さんのいうことは、大野さんはすぐに「はい」と言うことを聞く。すぐに話せと言われれば話すし、本を書けと言われれば書くしという、割と付かず離れずの関係でいる。多少その関係が今日の発言に垣間見られたと思う。別にそれを意識する必要はないがそういう方である。次の会の発表を理解していただけると思う。是非頑張って欲しいと思う。今日はありがとうございました。
前先生:寺尾さんがおっしゃられた様に大野先生が重要な発言をしていた。最後で疲れておられたはずなのに。大野先生がおっしゃられたことはまず、偏狭の地(北海道)で住まないと行けないのか。それに対して絶句してしまった。今回は過疎地域の話と人口密集地の話がある。この前も話したが、つい概念(コントラスト)がない。この話は今過疎の話をしているのか密集地の話をしているのか分からない。時としてよくわからない。極限の過疎の話をしていてどうするのかという地域と、人口の多い地域。(20億に展開だとか)(メリハリがつけられているひともいるが・・・) 住んでいる地域はなんとなく住んでしまっているが、過疎の地域になぜそこに住むのかということは力強くなぜそこでそういう生活をしなければならないか。なぜ北海道で省エネをやらないといけないのか。過疎が進んでいる人はなぜそこに住まないといけないのか。それを考えるのはいいこと。あと、石川先生や藤井先生がおっしゃられたことは伝統建築をどのようにとらえるか。(否定的に捉えた人もいたけど)いままでの地域のコンテクストが全く読めない。そことなんとなく建ってしまっている家とエコハウスと今回の設計する家がどのようになっているのか。それをほとんどの人が扱っていなかった。スタジオ課題で評価されるためには歴史を取り込むことが重要。(去年TAの菱田がそうだった)面積が少なくても、こいつ分かっているなと思ってもらえないと聞いてもらえない。その上でトゲのある提案をすることが大事。それが賢い方法。トゲだけだとアホだと思われる。(笑)また、全体としてはみんなまだ租借できていないと思う。当然誰もが疑問に思うところをつっこまれた。そもそもエコハウスをどう考えるか。未消化のままぶつけてしまって、そこを攻撃されて答えられなかった。ただ、考える時間もタイムリミットに来ていて、今日から建築をつくらないといけない。建築という意味では他のスタジオより2〜3週間遅れていますからかなり急がないと。今回エコハウスという手ごたえのあるものをテーマにしたが、去年まではイデオロギー先行だった。手がかりがない課題だった。それなのに今回建築の提案がないというのは。。。 せめてここを直そうとか全否定するとか。これから相当建築を作っていって欲しいと思う。後半は技術。コンピューターで風の流れを解くだとか。やっぱりそういうのがないと伝えられない。環境をどのように伝えるのか。ルールを自分で作るのがかつ方法であって相手の土俵の上で勝負しても負けるに決まっている。相手はその分野のプロなのだから。格闘技で勝とうとしたら相手の得意なルールでやらないこと。絶対に。だから細かいルールを決めて駆け引きしている。こちらの土俵に引きずり込んで勝つ。伝え方を考える。今のままでは技術を伝えただけ。なんでもいいから設計に入ってください。でないと間に合わない。ここから3週間。形を作ろう。